天台山
風光
古来、天台山は、多くの文人によってその美しさを讚えられてきた。
孫綽(東晋314-371)の漢詩書『天台山賦』が讚え、陶弘景(南朝453-536)の『真誥』が尊び、多くの漢詩書の賛美は、数えきれないほどである。
かつの高名な書道家の王義之(322-379)は、天台山に登山、詩人李白も華頂峰に居して漢詩を残すなど、多くの文人・墨客は天台山を尊んだ。
李白は「天台暁望」で次のように詠う。
天台は四明(山)に隣し、華頂は百超に高し。
門は標す赤城の霞、楼は棲す滄島(仙人の島)の月。
高きに憑って遠く登覧すれば、直下に溟渤を見る。
雲は垂れて大鵬翻り、波は動いて巨亀没す。……
天台山の最高峰は華頂山、海抜1138メートル。東方に海が望めるので望海頂ともいわれる。「山に八重あり、四面は一の如し」とは、天台山には1000メートル級の峰が八座あり、おれが山城にみえるとして「城」の四面に各各一城あることをいう。
天台山は、面積が約1400平方キロあり、多くの峰嶺が連なる一つの山塊群だが、天台山の面積はさほど広くはなく、山も高くはない。しかし有名なのは、その「古・清・奇・幽」の勝景があるためである。「山は高きにあらず、仙あって名をなす」である。その景色は、人々とがあこがれる神仙窟宅のようだから有名なのである。
また、「仙山仏国」は、天台山の総称でもある。天台山では、ほとんどの景勝地には仏寺・道観が幽隠され、仙景また仏寺・道観に密着している。寺・観は、仏・仙が住むところであり、寺・観は仙景とともにより天台山の仙気を加増している。
広い中国には勝山名水が多く、それぞれに性格をもつ。たとえば、泰山の巍峨たる壮麗、華山の峻峭たる山岳、黄山の千奇たる百怪、桂林の山青たる水秀、雁蕩山の争奇たる怪石、黄果樹の滝の気魄壮観などである。だが、天台山は、一つ山にそれらの各と特色すべてを合わせ持っている。
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天台山は泰山の雄姿をもち、華頂山頂には東海観日の奇観がある(華頂峰拝経台)
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華山と同じく層々険峰がある(瓊台仙谷)
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黄山と同じく瞬息万変の気象がある(華頂帰雲)
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雁蕩山と同じく冲霄石峰と迷離岩穴がある(明岩、寒岩、赤城)
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山青水秀は天台山のどこにもあり、滝の奇・険・多・趣に世に希である。
また、この天台山ほど多くの神仙窟宅・神奇伝説がある山は無く、さらに三里一寺廟・五里一道観で、仏教・道教を合わせ蓄えた「聖山仏国」の山も、他には類がない。
なによりも天台大師が入山修業し、この天台山が畢生の地となったことには、このような理由もあったと思える。聖地天台山は、大自然の天賦そのものなのである