天台山は、変化に富んだ美しい山嶺である。中国浙江省の東南沿海の台州市天台区にそびえており、ここに連なる多くの峰々を総称して天台山と呼ぶ。ここは、大都市から遊離した神秘の深山であり、この天台山には、古くから仙人が住むと伝えられており、霊山・仙山とも呼ばれてきた。
霊山
伝説
天台山の峰々
天台山では古くから、紀元前の周の霊王(前500年頃)の太子、王子晋が仙人となった「右弼真人」が、天台山を支配する神として祭祀されてきた。これは有名である。「右弼真人」は、鶴に乗って笛を吹き飛天する姿にも描かれる。この神は早くから、天台山麓の赤城山や道教の桐柏宮に祭祀されてきたが、同時に今日まで、この神は国清寺の伽藍殿にも守護神として祭祀されているのである。
天台山の寺院・道観には、天台山の多く山神が祠祀され(一菩薩十一君十六神)、国清寺と山神の関係は、ちょうど日本の比叡山における日吉社の神々のようだ。天台山は、仏教とともに道教の神君(神)と土地の神とが、共栄してきた神山でもある。これと同様に、中国各地のほとんどの寺院にも、伽藍神が祠祀されている。
赤城山
「天台山」は、中国の狹西省麟遊県・四川省羅江県・四川省広元県にもある。最も有名なのは浙江省の天台山である。
また中国各地にある「天臺山」とも区別しなければならない。天台山は古くより、紫微宮(北極星囲む部分)にある天の三台星宿(三星)に応ずる福境ゆえに、「天台」といわれる。「天台」は星を意味し、「天臺」とは描かないのである。
つまり「天台」は天に昇る意味の「上天之台」ともいわれる。かつて地域を画分するのに、天上の星座を基準とした。天台山の頂は三辰に対して牛女の分野に当たり、上の台宿・光輔・紫宸の三星お見積書福境に応じたので、天台山と名づけた、という。
星図
また、仏教と道教の教義はそれぞれ異なるが、同じく静修と徳の講究が目的であり、仏教では徳行の修が完成すれば得道し、道教では昇天する。このような仙山仏国の山境をまた「上天之台」ともいうのである。
荊渓大師湛然(711-782)の『止観弘決』巻1には、これを次のように説明している。
台とは星の名である。その地の分野は、まさに天の三台に応ずるので名づけられている。ある者が天梯と名づけた。謂わば、その山高く、昇って昇天できるといい、後の人はこれより転じて天台という。また章安潅頂尊者の「天台山記」には、「もとは南岳と称し、周の霊王の王子晋がこの山に居した。その魂をこの山の神とし、左右公に命じて名を改めて天台山とした」とある。
日本天台宗の宗章「三諦章」は、これに由来している。